魂が叫んでいるのに
□不毛の時代

それから パッタリと 彼の存在がなくなった。
七瀬さんからは 多少の情報はあった。 カラオケボックスでバイトをしているらしいと聞いていたが、
私の中での彼との運命はすでに完結したように思っていた。

私の高校時代は バイト・ 部活・ 遊び。 好きな人は出来たが、彼氏と呼べる人はいなかった。
遊んでいるのがとても楽しかった。周りの友人に彼氏がいなかったのも理由かもしれない。

高校も卒業を迎える。
進路については 先生に体育の道を進められたが、運動音痴の私になぜそんなことを言うのか
わからなかった。 私には別のはっきりとした目標があった。

客室乗務員・・・

子供のころからの夢だった。
その為、短大に進んだ。 英語が苦手だった私は 英語の専門学校にも行った。
母子家庭で金銭的に余裕がなかったが、祖父母に頼んで、学校に行かせてもらった。
本当に感謝している。

その頃、社会はバブル崩壊の時期。 会社や銀行までが破たんしていて その波は航空業界まできていた。

国内客室乗務員の社員募集停止・・・・。

なんてこった!!

それでも私は 外資系の航空会社を何社か受けた。結果はすべて不採用だった。

恋愛にしても、ほどほどに楽しむ程度で 特に何もなかった。
この時代は いわば、不毛の時代だった。

短大卒業後は、2年間の就職浪人。 バイトにあけくれながら、人生を模索していた。

そして2年後・・・ 待望の国内客室乗務員採用再開・・・・。
必死でくらいつき、 やっと内定をもらった。

念願のCAに・・・・・・。 22歳の春だった。
健一君のことはこの4年間ですっかり忘れていた。
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