高校生の私と猫。
道場に戻ると、みんな何事もなかったかのように練習していた。


『はなちゃん…どうしたの?顔色悪いよ?』

部で一番仲が良いM美が、私の顔を覗き込む。


「それが…矢取りの部屋には誰も居なくて。でも、手が出てきたよね?みんなも見てたでしょ?!」

『え?』


すると、他の部員が数人集まってきた。

『手なんて、見てないよ~』
『はなちゃんが突然練習を止めたから驚いた』
『何で怒ってたのかわからなかったしー』

「え?え?なんで?」

道場には12人もいて、みんな的の方を見ていたのに?


向かって右側から出てきたから、全員じゃなくても右側で練習していた人なら…

『手?見てないけど』


「え?だってほら、白い手が右側からさ…」

『だから、そんなの見てないよ』

「そんな…」


見たのは私だけ?
あんなにハッキリ見えたのに?

頭がクラクラする…


「そんなはずは…!!」

『はなちゃん!』

話そうとしたと同時に、部長に名前を呼ばれた。

『あとから、話を聞くから。とりあえず練習を再開しよう』

「…はい」


私は気分が悪くなり、練習が終わるまで道場の端に座っていた。
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