涙のない少年
ボクは慌ててジョーを抱き上げた
体は冷たくて、頭に大きな傷……
小さな鼻からも血を出していた
予想だけど
病気ではない
誰かに、故意に
何かをされたみたいだ
石をぶつけられたか…
蹴られたか。
彼女も、同じことを思っていたようだった
『一生懸命生きていたのに……捨てられても一生懸命……
ただでさえ限りのある命なのにひどいよ……』
大粒の涙をとめどなく流しながら、声を絞るようにして言ったその言葉が
やけに痛々しくて
たまらなかった。
彼女に買った、あったかかったはずの紅茶が
ボクのポケットの中で静かに冷めていた。