嘘つきな君
第一章
すべての始まり
「嘘っ!! やっばいっ!!」
冬の朝は嫌い。
布団の中が天国になるから。
そして、案の定。
天国の中にいたら地獄に突き落とされた。
目が覚めたのは出勤時間の1時間前。
遅刻まで逆算して考えると、すぐにでも家を出ないとアウトだ。
足元に絡まった布団を無造作に蹴り上げて、急いで洗面所に駆け込む。
ザバザバと顔を洗った後、ソファーの上に畳んだまま置いてあった服の山から、適当に引っ張り出したものをコーディネートも考えずに着込んだ。
「あ~も~ドラえもんっ!!」
テンパった末に訳の分からない事を口走りながら、化粧道具を広げてファンデーションを塗りたくる。
本当にこの世にドラえもんがいたら、秘密道具で一発解決なのに。
なんて、くだらない事を考えながらバタバタと顔を仕上げていく。
猛烈な勢いで自分の味気ない顔を仕事用の顔に変えていく。
こういう時、本当に女ってめんどくさい。
スッピンで行ける男の人が羨ましい。