嘘つきな君
この状況が理解出来ずに、息をする事も忘れる。

絡まり合った視線が施錠されて逸らす事もできない。


そんな時、重ねられた手に、ゆっくりと彼の指が絡んできた。

その瞬間、脈打つ体が敏感にピクンと跳ねた。


その間も、真っ直ぐに見つめられて、息をする事も忘れてしまう。

端正なその顔が、全てを魅了して私に魔法をかける。


徐々に熱くなる吐息。

今にも震えそうな体を必死に抑え込む。


そんな時、不意にカタンと静まり返った部屋に音が生まれる。

驚いた私は、勢いよく体を震わせて、反射的に手を振り払った。

彼も同じだったのか、驚いたように目を見開いて暗闇の中を見つめる。

それでも、ただの物音だったのか、そこには誰もいなかった。


途端に、決まずい空気が私達を包む。

互いに視線を逸らして、口を噤む。


「悪い」

「い、いえ……」


そんな窒息しそうな沈黙を破ったのは、彼の言葉。

それでも、この決まずさが晴れる事はない。


ただ変わらずそこにあるのは、爆発しそうな私の心臓の音。

そして、真っ赤になった私の顔だけ。

その表情を見られまいと、勢いよく立ち上がってバックを掴みとる。
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