嘘つきな君
運よくか、悪くかは分からないけど。
常務のスケジュールが、見事にこの撮影中だけ見計らったようにポッカリと空いていた。
もともと、新しく傘下に入ったシャルルの事は視察中という事もあって、私の今回の仕事に同行してもらう事になった。
ゆらゆらと揺れる気持ち。
嬉しい中にも、焦りがある。
これ以上、好きになりたくないのに。
深入りしたくないのに。
そんな中でも、嫌でも目に付くパーフェクトなプロポーションで、腕を組みながら撮影現場を見つめる神谷常務。
なんだか、こんな場所にいるからか、本当のモデルの様に見えてしまうから悔しい。
「ねぇねぇ、芹沢さん」
「はい?」
「あの人? 噂の神谷グループの御曹司って」
遠くに見える神谷常務を横目に、顔馴染みのスタッフ達が、代わる代わるにこの質問を飛ばしてくる。
その度に長々と、今までの事の流れを説明するハメになった。