嘘つきな君

意気地なしな自分が嫌い。

叶いもしない思いを捨てられない自分が嫌い。

だけど、突き放されるのが怖い。

だって、きっとこの気持ちを告げたら――。


「お前は俺の秘書だろ」


逃げた自分に自己嫌悪になっていた時。

静寂の中聞こえたのは、どこか甘いハスキーボイス。

驚きながらもゆっくりと視線を上げると、少しだけ口端を上げた常務が私を見つめていた。


「ドジで、口が悪くて、素直じゃなくて、意地っ張りだけど」

「――」

「やっと見つけた、俺の大事な相棒だ」


ポンッと優しく頭の上に乗る大きな手。

そして、黒目がちな瞳を優しく細めて、不敵に笑った。

その笑顔に、一気に目頭が熱くなる。

その言葉に、胸の中で何かが弾けた。


あぁ。

いつの間にか、私はこんなにも彼を好きになっていた。

世界が彼で溢れていた。

この気持ちを、抑えられるわけない。

だって、こんなにも好きなんだから――。

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