嘘つきな君

「好きなんです」

「――」

「側に置いてください」


呪文の様に、もう一度声に出した私に彼が微かに瞳を細めた。

どこか苦しそうに。

どこか悲しそうに。

そして――。


「ダメだ」


落ちた言葉は、私の心の熱を一気に奪う。

ストンと心臓が高い所から落ちたように。

言葉を無くした私を、ただただじっと見つめる常務。

その瞳は、先程とは違い、どこか私を拒んでいるように見えた。

その事が分かった瞬間、背筋が凍る。

慌てて言葉を発しようとするが、喉の奥につっかえて出てこない。


すると、茫然と座り込む私を振り切る様に勢いよく立ち上がった彼。

一気に高くなったその背を、ただただ見上げた。

そして。


「帰るぞ」


私に背を向けて、素っ気なくそう言った彼。

その背中を見て、その声を聞いて泣きそうになる。


「待って下さいっ!!」


慌てて立ち上がった瞬間、右足に激痛が走ってバランスを崩した。

あっと思った瞬間、冷たい床が体に打ちつけられる。

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