嘘つきな君
そんな、いつもの様子と違う私を見て、微かに首を傾げた仁美。

ショートボブの髪が、艶やかに垂れるの見ながら口を開く。


「う~ん……」

「何。唸っちゃって」


難しい顔をして唸った私を見て、ケラケラと笑う仁美。

お酒が足りないと思ったのか、近くを通った店員に追加のワインをオーダーしてくれた。

そして、再び私の方に視線を向けて首を傾げながら口を開いた。


「悩みの種は、その捻挫?」

「……違う」

「じゃぁ、何?」


訝しげに首を傾げた仁美を視界の端に捉えて、口を閉ざす。

しばらくして重たい口を開こうとしたが、言葉が出る事はなかった。


――言えない。

まだ、心がそこまで追い付いていない。


「ごめん。もう少し待って」

「――」

「自分勝手だって分かってる。でも……言葉にした瞬間、私もっと落ちちゃいそうで」


こんな事に付き合わせているのに、種明かしをしないなんて自分勝手すぎる。

それでも、どうしても言えなかった。

言ったら、今にも泣き出してしまいそうで。


辛い事から逃げてばかりの。

駄目な私。

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