嘘つきな君

ひとしきり笑った後、先輩が小さく首を傾げて口を開いた。


「仕事帰り?」

「いえ。今ちょうど仁美と飲んでたんです」

「相変わらず仲良いなぁ~お前達」


小さな笑窪を頬に浮かべて、微笑む先輩。

つられる様にして微笑むと、先輩は何か考え込むように視線を上に向けた。

そして。


「芹沢、今空いてる?」

「空いてます……けど?」

「明日休み?」

「休みですけど。どしたんですか?」

「いや。俺も明日休みだし、思いっきり飲みたいな、と思ってな」


そう言って、しっかりと締められていたネクタイを乱暴に緩めた先輩。

大人びたその姿だけど、中身は昔のままだと思って嬉しくなる。

学生時代も、こうやってよく先輩と飲みに行ったっけ。


「ちょうど良かったです! 私も飲み足りないと思ってた所なんです」

「よし! じゃぁ、美味い酒でも奢ってやる」

「本当ですか!? じゃぁ、うんと高いボトル開けましょう」

「お前なぁ」


ケラケラ笑って歩き出した先輩の後を追う。

なんだか大学時代に戻れた様な気がして、妙に頬が緩んだ。


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