嘘つきな君
「最低っ!! 悪魔っ!! 大魔王っ!!」
テーブルに着くや否や、そう叫んで仁美のワインを奪い取って一気に喉に流し入れる。
そんな私を、ポカンと口を開けて見上げる2人。
「どしたの?」
「今ね。ものすっごい性格の悪い男に出会ったのっ!!」
「どんな?」
「もう、思い出したくもない程の失礼な男っ」
「どんなのよ」
「もうね、ジャイアンみたいな男っ!!」
本当っ、頭にくる。
もし次に会ったら、絶対文句言ってやるっ。
「忙しい子ね~あんたは」
「あ。菜緒、膝怪我してる。また転んだのか」
「確かに大学の頃からよく転んでましたよね~」
「もう、2人とも煩いっ!!」
ケラケラと楽しそうに笑う2人を睨みつけて、チーズを口の中に放り込む。
それでも、チラリと自分の膝を見ると、確かに少しだけ血が出ていた。
悔しいけど、確かに先輩や仁美の言う通り昔から足元が危なっかしいというか、転んだり躓いたりする事が多かった私。
決して運動神経が悪いとかじゃないけど、気を抜くとこうなっている事がたまにあった。