嘘つきな君


その瞬間、悲しさが伸びる。

彼がこのホールディングスを継ぐ道を選ぶなら、私は最早どうする事もできない。

想う事すらも無駄で、希望を胸にする事は馬鹿げていて。

一筋の光もない未来は、暗くて冷たいものだ。


涙が零れそうだった。

胸が掻きむしられて息もできない。

もしかして、彼は私を選んでくれるかも。

そんな少しの期待も簡単に打ち砕かれて、先が見えなくなる。

やっぱり、彼と私の未来は交わる事は無いのだと思い知らされただけだった。


こんなにも好きなのに。

こんなにも想っているのに。

そんな理由で諦めたくなんてないのに。

それでも、どうすればいいか分からない。

恋愛は1人で出来るものではない。

彼が想いを返してくれて、初めて成立するもの。


それでも、彼の覚悟はきっと決まっていて、変わる事のない未来だとは分かる。

この会社を継ぐ事、愛のない結婚をする事、それはもう覚悟の上だった。

その未来を、彼は受け入れている。

ううん。

未来を諦めている。

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