嘘つきな君

「――…好き」


どうしようもないくらい、あなたが好き。

この気持ちを受け取ってくれた、あなたが好き。

私を見つめる、あなたが好き。


いつも我儘で、自信家で、意地悪で、悪魔みたいな、あなた。

だけど本当は、誰よりも優しくて、誰よりも愛に飢えた人。


寂しそうに瞳を歪めるあなたを、もう見たくない。

辛そうに唇を噛みしめるあなたを、もう見たくない。


私があなたを守ってあげたい。

あなたに降り注ぐ全ての悲しさから、あなたを守ってあげたい。

そんな大それた事できないかもしれないけれど。

だったら、抱きしめてあげていたい。

そっと、あなたが辛い時、隣に寄り添っていたい。


「好きよ」


涙の上で微笑んだ私を見て、ふっと小さく笑顔を作った彼。

そして、ご褒美だと言わんばかりの顔で私にキスをくれる。


微かに離れた唇の間で、彼の熱い吐息が漏れる。

しがみつく様に、ぎゅっと強く背中に手を回すと、一気に導かれる様に世界が揺れる。


「常務っ……あぁっ」


ねぇ。

きっと私達は何もかも違うから、惹かれあったのかもしれないね。

持っているものも、生まれも育ちも、価値観も、なにもかも、私達は違う。


だからこそ、あなたの事をもっと知りたいと思ったんだと思う。

何を考えて、どんな世界を見つめているのか。

どんな景色を見て、どんな事を思うのか、知りたいと思ったの。
< 195 / 379 >

この作品をシェア

pagetop