嘘つきな君
「――…好き」
どうしようもないくらい、あなたが好き。
この気持ちを受け取ってくれた、あなたが好き。
私を見つめる、あなたが好き。
いつも我儘で、自信家で、意地悪で、悪魔みたいな、あなた。
だけど本当は、誰よりも優しくて、誰よりも愛に飢えた人。
寂しそうに瞳を歪めるあなたを、もう見たくない。
辛そうに唇を噛みしめるあなたを、もう見たくない。
私があなたを守ってあげたい。
あなたに降り注ぐ全ての悲しさから、あなたを守ってあげたい。
そんな大それた事できないかもしれないけれど。
だったら、抱きしめてあげていたい。
そっと、あなたが辛い時、隣に寄り添っていたい。
「好きよ」
涙の上で微笑んだ私を見て、ふっと小さく笑顔を作った彼。
そして、ご褒美だと言わんばかりの顔で私にキスをくれる。
微かに離れた唇の間で、彼の熱い吐息が漏れる。
しがみつく様に、ぎゅっと強く背中に手を回すと、一気に導かれる様に世界が揺れる。
「常務っ……あぁっ」
ねぇ。
きっと私達は何もかも違うから、惹かれあったのかもしれないね。
持っているものも、生まれも育ちも、価値観も、なにもかも、私達は違う。
だからこそ、あなたの事をもっと知りたいと思ったんだと思う。
何を考えて、どんな世界を見つめているのか。
どんな景色を見て、どんな事を思うのか、知りたいと思ったの。