嘘つきな君

そんな中で唯一同じだったのは、この気持ちだけ。

真っ赤に色づく、この気持ちだけ。


未来なんてない恋だけど。

幸せばかりじゃない恋だと分かっているけど。

それでもお互い、求めあった。

まるで磁石の様に、惹かれあった。


だったら。

私達はきっと世界で一番、欲張りなのかもしれないね。

自分にはないもの、全部欲しいと思ったんだから。


「俺を見ろ」

「――っ」

「もっと、俺を見ろよ」


深い深い霧の中でも。

あなたが私の手を握ってくれるなら。

私は喜んで、その中に足を踏み入れよう。


いつか離されてしまう手だと分かっているけど。

その時がくるまでは。

ずっと、あなたの側に。


「――んぁっ……常務っ」


神様。

未来に希望なんて持ちませんから。

彼を独り占めしたいなんて願いませんから。

どうか少しの間だけ、彼の傍にいさせて下さい。

彼を愛する事を、許して下さい。
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