嘘つきな君
「頑張って下さい!! 新婚さんっ!!」
「は~い」
重たい足を引きずる様に出口に向かった先輩に手を振る。
その後ろ姿は、本当に嫌そうで思わず小さく笑ってしまった。
それと同時に、ふとある言葉が頭を過る。
『結婚とは鳥籠の様なものだ。外にいる鳥達は悪戯に入ろうとし、中の鳥達は悪戯に出ようともがく』
確かに、そうかもしれないと思う。
その象徴ともいうべき人が、目の前にいるから何とも信憑性のある言葉だ。
「確か、モンテーニュの言葉だっけ……」
カタカタとパソコンを打ちながら、記憶の中の言葉を探る。
結局、みんな自由がいいのかな。
それとも、ただ隣の芝が青く見えるだけ?
それでも、彼女の左薬指に光る指輪を見て、羨ましいと思う私も。
所詮は、鳥籠に憧れる鳥でしかないのかもしれない。