嘘つきな君

「誰か来たらどうするの」

「来ないだろ」

「来るかもしれないでしょ」

「こねーよ」


恥ずかしさを紛らわそうと視線を外す私に、再びゆっくりと大きな手が伸びてくる。

腕まくりしたシャツから覗くのは、少し日に焼けた肌。

伸びてきた頬が、私の熱を確かめるように頬に添えられる。

そっと触れられた頬に、温かさが走る。

それを合図に、まるで引き寄せられる様に再び互いの唇を重ねた。


「――…常務ってキス、好きですよね」

「嫌いな奴なんていんの?」

「ふふっ、いないかも」


微かに唇を離して、互いの熱い吐息が交わる中で、他愛もない会話をする。

交わす言葉が増える度、どんどん好きになっていく。

新しい彼の表情を知る度に、また好きになっていく。


「ねぇ、キスに相性ってあるのかな?」

「何、突然」

「前に先輩が言ってたの」

「じゃぁ、俺達は相性がいいのかもな」

「え、なんで」

「だって、キスしてて気持ちいいだろ?」


そんな恥ずかしい事、ケロッとした顔で言うもんだから、こっちが恥ずかしくなる。

ふと、こういう時に海外生活の長さを感じるよね。


フランクというか。

距離感というか。

なんというか。
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