嘘つきな君





「あははっ!! さっき菜緒が不機嫌だったのは神谷のせいだったのか」

「俺のせいじゃねーよ。コイツが非常識にも通路の真ん中で座り込んでたんだ」


ブスッとした顔でそっぽを向く私を見て、ケラケラと笑う先輩と。

全く悪びれた様子のない、神谷 大輔(かみや だいすけ)と名乗った悪魔みたいな男。


「座り込んでたんじゃありません! 転んだんですっ」

「どんくさ」

「あなたねぇ!! それに私は子供じゃありません。もう26歳ですっ」

「へぇ、どっかの大学生かと思った」


今にも掴みかかりそうな私を横目に、涼しい顔で運ばれてきたワインを口にする男、神谷。

その、どこか人を小馬鹿にした様な態度にイライラが募っていく。


「でもさ~、大輔も手ぐらい差し出してやれよ~。一応女だぞ?」

「先輩。一応は余計です」


鋭い視線を先輩に向ければ、そうだっけ? と、とぼけた様に笑う先輩。

そんな私達のやり取りを、爆笑しながら観戦する仁美。


「悪魔かと思いました」

「へぇ、俺はどっかの座敷童かと思った」

「――っ!!」


ケロッとした顔でそんな事を言うもんだから、思わず拳を握ってブルブルと震える。

初対面の女性に、なんて失礼な男っ!!

ここまでバカにされたのは初めてだ。

ほんと、腹立つ――っ!!


< 21 / 379 >

この作品をシェア

pagetop