嘘つきな君
◇
「あははっ!! さっき菜緒が不機嫌だったのは神谷のせいだったのか」
「俺のせいじゃねーよ。コイツが非常識にも通路の真ん中で座り込んでたんだ」
ブスッとした顔でそっぽを向く私を見て、ケラケラと笑う先輩と。
全く悪びれた様子のない、神谷 大輔(かみや だいすけ)と名乗った悪魔みたいな男。
「座り込んでたんじゃありません! 転んだんですっ」
「どんくさ」
「あなたねぇ!! それに私は子供じゃありません。もう26歳ですっ」
「へぇ、どっかの大学生かと思った」
今にも掴みかかりそうな私を横目に、涼しい顔で運ばれてきたワインを口にする男、神谷。
その、どこか人を小馬鹿にした様な態度にイライラが募っていく。
「でもさ~、大輔も手ぐらい差し出してやれよ~。一応女だぞ?」
「先輩。一応は余計です」
鋭い視線を先輩に向ければ、そうだっけ? と、とぼけた様に笑う先輩。
そんな私達のやり取りを、爆笑しながら観戦する仁美。
「悪魔かと思いました」
「へぇ、俺はどっかの座敷童かと思った」
「――っ!!」
ケロッとした顔でそんな事を言うもんだから、思わず拳を握ってブルブルと震える。
初対面の女性に、なんて失礼な男っ!!
ここまでバカにされたのは初めてだ。
ほんと、腹立つ――っ!!