嘘つきな君

「タイムリミット?」

「そう。あと何年先かは分からないけど、その時が来たら私達は別れなきゃいけないの」

「え、待って。訳分かんない」


無理に作った笑顔で、必死に震える唇を押さえる。

そんな私を見て、仁美は訝しげに首を傾げた。


そうだよね。

普通じゃ考えられないよね。


「――…常務は将来、会社の為に結婚しなきゃいけないんだって」

「――え?」

「政略結婚っていうの? 神谷グループの為になる人との結婚が決まっているの。それが、いつかは分からないけど。でも、将来、必ず」

「――」

「だから、私達はその時までの期間限定の恋人同士なの」


私は笑えているだろうか。

泣いていないだろうか。


目の前の仁美が、言葉を無くしている。

ザワザワと煩かった世界が音を無くす。

そして。


「そんなの……あんたが辛いだけじゃない」


落ちた言葉は。

静かだった。

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