嘘つきな君
仁美の言葉に頷きもせずに、ニッコリと無理に笑う。
ピクピクと痙攣しそうな頬を吊り上げて。
平気だ、とでもいうように。
「分かってる」
「分かってないっ!! あんたは、その言葉の意味を、全然分かってないっ!!」
「理解してるよ。ちゃんと、覚悟もできてる」
目を吊り上げて、必死にそう訴える仁美から逃げるように視線を下げる。
お願いだから、否定しないでと思って。
「いつか別れなきゃいけない事も、分かってる。その時の覚悟も、ちゃんとできてる」
「神谷さんは?」
「理解してる。それに、初めから、お互いそれを覚悟で付き合いだしたから」
「――」
「今はただ、好きなだけなの。常務も私を好きになってくれた。だから一緒にいるの」
「いつか別れるって、分かってるのに?」
「それでも、一緒にいたいの」
「――」
「例え、限られた間だけでも一緒にいたいの」
ゆっくりと上げた視線の先には、悲しそうな顔で私を見つめる仁美がいた。
理解できない。
そう顔に書いてある。