嘘つきな君
「おいおい~。今日くらい優しくしてやれよ~。なんてったって菜緒は――」
「先輩っ!!」
酔いが回ってきたのか、頬を赤く染めた先輩が何やら爆弾発言をしようと口を開けた所をギリギリの所で止める。
きっと今、私が失業した事を言おうとしたなっ!!
なんで出会ったばかりの人に、人生一番の恥をさらさなきゃいけないんだっ。
おまけに、こんな悪魔みたいな男に今の状況を知られたら、バカにされるに決まっててる。
もう粉々になりかけている私の心を、これ以上踏みにじらないでよっ。
一応私にもプライドってもんがっ。
「少し黙ってて下さいっ、先輩っ」
隣に座る先輩の口を必死に塞ごうと奮闘する。
それでも、あっけなく片手で頭を押さえられて実行できず。
「一昨日会社が倒産して、めでたくニートデビューしたみたいなんだ」
あっけなく恥をさらされた。