嘘つきな君
それでも、我に返って勢いよく布団を弾き飛ばした。


「シ、シンガポールゥ!?」

『あぁ。8時半に成田集合だ』

「ちょ、ちょっと待って下さい。なんで突然っ!?」

『急に仕事が入った』

「突然すぎでしょっ。それに、私何の準備もしてませんっ」

『必要なものはあっちに揃ってる。足りなかったら買え』

「いやいやいやっ! 私今起きたばかりですよ!」

『戯言はいいから、さっさと仕度しろ。パスポートだけは忘れるなよ』

「8時半って……あと2時間後じゃないですかっ!!」

『あっちには3泊する。じゃぁ、遅刻するなよ』

「ちょっ――」


文句を言おうと口を開いた瞬間、プツリと一方的に電話を切られた。

ツーツーという虚しい音が耳元で静かに響く。


まだ寝起きという事もあって、なかなか回らない頭。

それでも、さっきの電話の内容を頭の中で必死に纏める。


「シンガポールに……3泊4日の出張」


そして、チラリと時計に目を向けてから、慌ててベットから跳ね起きた。
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