嘘つきな君
それでも、私はもう26歳の自立した一人の女。

ここで子供みたいにムキになった方が逆に負けだ。


「そういう、神谷さんはどんなお仕事されてるんですか?」


それでも妙に腹正しくて、突っかかる様な喋り方で神谷さんに問いかける。

すると、ワインを口に運びながら、彼がじっと上目使いで私を見つめてきた。


黒目がちな瞳が、テーブルの上のキャンドルを取り込んで輝く。

どこか退廃的な色気が漂うその姿に、思わず見惚れてしまいそうになる。

それでも。


「秘密」


次に落とされた彼の言葉に、思考が一瞬停止する。


――…秘密?

え、待て待て。

こっちは人生の恥をさらしたのに、自分は教えないって、どんだけ!?

どんだけ、空気呼んでないのっ!


再び怒りのボルテージがグインと上がる。

そんな中でも、テーブルの上のクラッカーを口に運んで優雅に夜景を楽しんでいる神谷。

その余裕をかました姿に、ブルブルと怒りで体が震えた。


何!?

何なの、この屈辱感っ!!


「あ~もしかして、神谷さんもニートですか?」

「お前と一緒にするな」

「お前ってっ!!」

「まぁまぁ、菜緒。落ち着け」

「落ち着けってっ……! もとわといえば先輩のせいですよっ」


お願いだから、今日ぐらい私を労わってよっ。

少なくとも、この4人の中では私が今一番不幸の最中でしょ!?

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