嘘つきな君

体の芯が溶けてしまいそうになる中、ようやく唇が離れて瞳を開けた。

目の前には、色っぽく唇を濡らした常務が、どこか気怠げに瞳を開けて私を見つめていた。

その姿に、胸が締め付けられて心拍数が上がる。


「やっと、キスできた」

「パーティーの前にも途中にもしたじゃない」

「あんなのじゃ、足りない」

「本当、キスが好きだよね。常務って」

「お前だからだよ」

「え?」

「お前だから、したくなる」


彼の一言で、目眩がしそうな程、甘い世界になる。

その中に引き込まれて、我を見失う。


「――…だったら」


熱い息が零れる中、堪らなくなって小さな声が漏れる。

後頭部に添えられた手が、燃える様に熱い。

私を見つめる瞳に吸い込まれそうになる。


「もっと、キスして」


もっともっと、あなたが欲しい。

キスだけじゃ、足りない。

もっと深く、あなたを感じたい。


子供の様にキスをねだる私を見て、微かに瞳を細めた常務。

ふっと小さく息の下で笑ったかと思ったら、苦笑いを浮べて私の頬に手を添えた。

そして。


「我慢の限界」


そう言って、まるで獣の様に唇を重ねた。
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