嘘つきな君


「――んっ……あぁっ」


ギシギシとスプリングが鳴る中、悲鳴の様な声が漏れる。

弓の様にしなる体が、自分のものじゃないみたいだ。

ふと足元に目をやれば、脱ぎ散らかしたドレスや靴が散乱していた。


明かりも消さずに、部屋に入るなり唇を重ねた私達。

待ちきれないと言わんばかりに、片時も唇を離さずに。

どんどんドレスが脱がされ、あっという間にベットに倒れ込んだ。


「やぁ……んっ」

「菜緒」

「だめ……もぅ……あぁっ」


何度昇りつめても、彼は私を離してはくれない。

私の体の全てを知り尽くした彼は、ぐったりする私を何度も蘇らせる。

汗が滲む中、声が擦れる中、体が痙攣する中、甘い声が耳に届く。


「まだだ。もっと、俺を感じろ」

「あぁっ!!」


獣の様に求め合う。

まるで、溶けて一つになる事を望む様に――…。

< 263 / 379 >

この作品をシェア

pagetop