嘘つきな君

「今日はゆっくり休め」

「――…もう動けないよ」


筋肉質な彼の腕が、私の頭の下に潜り込んでくる。

あっという間に腕枕されて、笑みが零れた。


「明日、常務も仕事ないでしょ?」

「あぁ」

「じゃぁ、飛行機の時間まで、シンガポールを観光しない?」

「お前の足に力が入ったらな」


瞳を輝かせた私に、意地悪な言葉が返ってくる。

絶句した私を見て悪戯っ子の様に笑った彼は、わざとらしく私の足をすっと撫でた。


「変態っ!!」

「男はみんなそうだろ」

「開き直らないでよっ!!」

「あんまり大きな声出すと、隣に聞こえるぞ」

「――っ!?」

「まぁ、もう聞こえてるだろうけど」


ニヤリと笑った顔を見て、卒倒しそうになる。

本当に、悪魔みたいに意地悪なんだから。


「もう寝ろ」


渾身の力で睨み付ける私を無視して、額にキスを落とす彼。

見惚れてしまう程端正な顔が間近に迫って、思わず息を詰めた。


「おやすみなさいっ」

「あぁ。おやすみ」


真っ赤になる顔を見られたくなくて、咄嗟に彼の胸に顔を埋める。

すると、クスクスと笑った彼は優しく私の髪を撫でた。

何度も何度も、慈しむ様に。


そんな中、自分が思っている以上に疲れていたのか、私はあっという間に意識を手放した。

彼の腕に抱かれながら――。
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