嘘つきな君
小さな約束が降り積っていく。
私の宝物が増えていく。
それらが増える度に、未来がどんどん輝いていく。
眩しいくらいに。
目も開けられないくらいに。
『当機は、まもなく―――…』
それから暫くして告げられた機内アナウンスに、一気にテンションが下がる。
画面を見れば、飛行機の絵が見慣れた日本の上空にいた。
「……着いちゃった」
「また忙しくなるぞ」
まるで子供の様に呟いた私とは正反対に、彼は着ていたスーツの襟を正す。
そして、ポケットからセルフレームのメガネを取り出して、一気に仕事用の顔になった。
ううん。
日本用の顔になった。
作り出された『神谷常務』を横目に、私も仕事モードに頭を切り替えていく。
そうだ。
もう、楽しい旅行は終わったんだ。
また今日から、常務と秘書の日々が始まる。
楽しかった分、頑張らなきゃ。