嘘つきな君
だけど、それでもいい。

彼の隣にいれるなら。

一緒に笑い合っていれるなら。


「一度会社に戻りますか?」

「そうだな。報告しなければいけない事がある」

「分かりました。車を手配しておきます」


小さく頷いた常務を横目に見ながら、段取りを決めていく。

帰ってから何か急な会議など無かったスケジュールを確認する。

そんな時――。


「神谷大輔様」


突然女性の声が聞こえて、動きを止める。

なんだろうと思って顔を上げると、キャビンアテンダントの女性がニッコリと笑って立っていた。

常務も気づいて、読んでいた本から視線を上げた。


「神谷は、私ですが」

「ご伝言をお預かりしております」

「伝言?」

「お迎えにあがりました、と」


その言葉を聞いて、微かに首を傾げる。

チラリと隣の常務に答えを求める様に視線を送るが、全く表情を変えずにCAの女性を見ていた。


――お迎え?

神谷グループの誰かが手配してくれたのかな?



< 270 / 379 >

この作品をシェア

pagetop