嘘つきな君
「せっかくなら、驚かせたいなぁ」
初めてのイベント事だから、ウキウキして仕方なかった。
何カ月も前からプレゼントを考えて、選びに選び抜いたモノだ。
本当は一緒に仕事終わりに過ごせたらと思っていたけど、我儘は言えない。
それに、間違いなく彼は今日が自分の誕生日だという事を忘れている。
そういう事に、全く無頓着な人だから。
「直帰って言ってたし、もう会社には戻ってこないよね」
誰に聞くわけでもなく、常務室の中に生けられた花の手入れをしながら、一人呟く。
今日を逃したら、なんだかプレゼントのありがたみが薄れそう。
前日ならまだしも、誕生日を過ぎてからプレゼントを渡すって自分的に嫌だ。
だからといって、渡すタイミングが全く見当たらない。
どうしたものかと唸りながら、パチンと萎れてしまいそうな百合の花を切った。
その時。
「大輔さん、もうお帰りにならないの?」
突然聞こえた声に、その場で勢いよく飛び上がる。
そして、その勢いのまま慌てて後ろを振り返った。
すると。
「ごめんなさい。驚かせてしまったわね」
可愛らしい声と、その姿を見て目を見開く。
ドクンと心臓が大きく鳴って、息も出来ない程締め付けられる。
どうして、ここに?
「園部様……。柳瀬さん……」
振り返った先にいたのは。
いつかの2人だった。