嘘つきな君

驚きすぎたのか、そんな言葉しか出てこなかった。

それでも、ニッコリと上品に微笑む桃香さん。

そして、その隣で鷹の様に鋭い瞳で私を見つめる柳瀬さん。


本当はこの場から一刻も早く逃げ出したい。

だけど、そんな事許されるはずもなく、必死に笑顔を張り付けて慌てて頭を下げた。


「ご、ご無沙汰しております」

「大輔さんの秘書の方よね?」

「あ、はいっ」

「彼、今日はお戻りにならないの?」


私にゆっくりと歩み寄ってきて、その小さな顔を微かに傾けて寂しそうに問うてくる彼女。

その姿に、女の私ですら魅入ってしまう。


近くで見れば見るほど、本当に可愛らしい人。

少しの、くすみもない陶器の様な肌。

ビー玉の様に大きな瞳に、驚くほど小さな顔。

色素の薄い髪と瞳が、どこかハーフの女性を思わせる。


「はい。今日はお戻りにはならないようです」

「そう……残念」


可愛らしい透き通った声を聞いて、声までも綺麗なのかと思ってしまう。

なんだか目を合わせる事が出来なくて、視線を外して無理に笑ってみせる。


胸が。

掻きむしられそうだ。

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