嘘つきな君
言葉を無くした私に気づかず、桃花さんは真っ白な頬を薄く染めて笑う。

どこか、無邪気な女の子の様に。


「今日もね、大輔さんの誕生日だから、プレゼントを持ってきたの。でも、仕方ないですね。お仕事ですもの」

「――」

「私しばらくアメリカにいて、お会いする事ができなかったでしょ? だから、久しぶりに会う事ができる様になって、私嬉しくって」


頬をピンクに染めた彼女が、嬉しそうに笑う。

その姿が、まるでフィルターの向こう側の様に感じる。

まるで、映画のスクリーンの向こうの様に。


ふと、視線を感じて瞳を動かす。

すると、そこには、ただじっと私を見つめる柳瀬さんがいた。

まるで獲物を追い詰める様な、鋭い視線に胸が締め付けられる。


『お返しいただく』


何度も、呪いの様に渦巻く言葉。

細い糸で心臓をギュッと縛られた様に、胸が痛む。

思わず噛みしめた唇から、血の味がした。


「でも、こんなすれ違いも、いつかなくなるわ」


そんな中、ポツリと落とされた言葉。

その瞬間、息も忘れて彼女の姿を見つめた。


「もしかしてご存じかと思いますけど。私達、いずれ一緒になるの」

「――」

「親の決めた結婚だけど、私は嬉しいわ。彼の傍に、ずっとずっといられるんですもの」

「――」

「どんな時も、隣にいれるの」


そう言った彼女の言葉を、受け止める。

耳を塞ぎたくなる言葉を、受け止める。


私は、泣いてはいなかっただろうか――。

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