嘘つきな君






風が冷たい。

秋の匂いが町中に充満している。

空を見上げれば、雲に半分隠れた月が覗いていた。


そういえば、彼と出会ったのは梅雨の時期だった。

シトシトと銀色の糸の様な綺麗な雨が降っていた、あの時期だった。

あれからもう、半年も経ったんだ。


ただ茫然と立ち尽くして、そんな事を思う。

それでも、頭がうまく働かない。

何かを考えても、すぐに真っ黒に染められてしまう。

あの言葉に、染められてしまう。


『彼のそばに、ずっとずっといれるんですもの』


考えたくないのに。

思い出したくないのに。

頭から離れてくれない。

それらを振り払う様に、ぎゅっと強く瞳を閉じた。

その時。


「芹沢?」


不意に聞こえた声に、瞳を持ち上げる。

そして、ゆっくりと声のした方へ視線をずらした。

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