嘘つきな君
「うわぁ~!!」
歓喜の声を上げた私を見て、彼はクスクスと笑った。
天まで届きそうなマンションの最上階。
そこから見える夜景は、まさに圧巻だった。
「やっぱり、神谷一族は夜景が好きなんですね」
「たまたまだよ。それに、ほとんどカーテンは閉めっぱなしだし」
「なにそれ。宝の持ち腐れじゃないですか」
冷蔵庫からミネラルウォーターを持って、窓際に立つ私の隣に並んだ彼。
その端正な横顔に、思わず釘づけになる。
「なんだか久しぶりですね。こうやって2人っきりになるの」
「ここ最近忙しかったからな。さすがに疲れた」
「ふふっ、お疲れ様です」
深い溜息を吐いた彼に、微笑みかける。
すると、夜景を見つめていた彼の瞳が、ゆっくりと私に向けられて優しく細められた。
その姿が愛おしくて愛おしくて、そのままギュッと抱き着いた。
「どした」
「――」
「おい――…」
「誕生日、おめでとう」
突然の私の行動に、心配そうに私の顔を覗き込んだ彼。
それと同時に、胸の中に溜めていた言葉がようやく口から零れる。
ゆっくりと顔を上げると、少し驚いた様に目を開く常務がいた。
その顔を見て、やっぱり忘れていたんだと分かって可笑しくなる。
「やっぱり、忘れてたでしょ」
「そういえば、そうだった」
「ふふっ。――はいこれ、プレゼント」
思い出した様に頭を掻いた彼に、バックの中に大切に仕舞ってあるプレゼントを渡す。
すると、今度は動揺した様に瞬きを繰り返した彼。
「開けてみて?」
驚いた顔でプレゼントの小箱を見つめる彼に、クスクスと笑いながら開ける様に催促する。
すると、我に返った様子で、彼はゆっくりとリボンを解いた。