嘘つきな君
ゆっくりと解かれていく、真っ赤なリボン。
その中に入っているのは――。
「気に入ってもらえると、嬉しいな」
ベルトの所がレザーになっている、シンプルな時計。
一目見て、即決だった。
仕事用の時計しか持っていないから、プライベート用が欲しいって、いつか言っていたから。
「時計、欲しいって言ってたから」
「覚えてたのか」
「あたりまえじゃないですか」
「嬉しい」
「ふふっ、そう言ってもらえると嬉しい」
箱に入った時計を取り出して、自分の腕につけた常務。
そして、私にソレを見せて嬉しそうに笑った。
「ありがとう、芹沢」
「どういたしまして」
何度も近づけたり、遠ざけたりする彼を見て、笑ってしまう。
なんだか子供みたいだと思って。
そんな事を思いながらニコニコと笑って彼の姿を見つめていると、不意に目が合って抱きしめられた。
暖かくて大きな胸の中に、一気に閉じ込められる。
「大切にする」
「うん」
「ありがとう」
「うん」
耳元で囁かれる、甘いハスキーボイス。
その声に応えるように、彼の背中に腕を回してギュッと抱きしめた。