嘘つきな君

すると、更に抱きしめる力を強くした彼。

床に映った私達の影が、一つになった。


ただ何も言わずに、抱きしめあう。

どちらの心臓の音か分からなくなる程に。

それでも。


「まさか、プレゼントを用意してるなんて思わなかったな」


そんな沈黙を破ったのは彼の声。

ゆっくりと私の肩に手を添えて、距離を取った。

優しく瞳を細めて、私を見下ろしている。


「あたり前じゃないですか。一大イベントなんだから」

「女って好きだよな。イベント事」

「常務が興味なさすぎるんです」

「悪かったな。そういう習慣がないんだよ」


不貞腐れて頬を膨らませた私の髪を、クシャッと乱暴に撫でた彼。

そして、私の手を引いてバルコニーの方へ歩いて行った。


連れられるまま来たのは、板張りの広いバルコニー。

ホームパーティーでもできそう程広いそこは、沢山の木が植えられていたり、お洒落な間接照明やソファなどが置かれていた。

そして、その向こう側には東京の夜景が一望できた。


「すごーい……」

「俺のお気に入りの場所」


まるで映画の中のような光景に、言葉を失う。

やっぱり天下の神谷グループ。

スケールが違う。

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