嘘つきな君
ゆっくりと空を見上げていた視線を下して、顔だけ振り返る。
すると、私を見つめる黒目がちな瞳がそこにはあった。
その目を見て、思う。
「嘘ばっかり」
ふっと小さく笑ってそう言うと、彼はどこか辛そうに微かに瞳を細めた。
その表情を見て、やっぱりと思う。
あなたも、私も、分かっているはず。
この運命から逃げる事はできないって事。
それに、あなたは初めから全て受け止めている。
私と違って、ちゃんと覚悟している。
強い信念を持って、曲がらない強い芯を心に添えて、前を向いている。
そういった所を、好きになったんだもの。
「……独り言だ」
一度瞳を伏せてからそう言って、再び夜景に目を映した彼。
その視線を追う様に、私もただ真っ直ぐに前を見つめる。
あと、どれくらいこうやって一緒にいられるだろう。
ゆらゆらと揺れる恋は、確実に終わりに向かって歩みを進めている。
いつか今日の日を、懐かしく思う日がくるのかな。
プレゼントを渡した事や、抱きしめあって夜景を見た事とか。
幸せだったと、まるで刹那の一瞬だったと。
隣にいた、あなたを懐かしく思う日が来るのかな。
そう思ったら、突然切なさが押し寄せてきて涙が溢れそうになる。
息も出来なくなって、胸が押し潰されそうになる。
「もうすぐ冬だな」
「――…うん」
震える声を押し込めて、小さく頷く。
未来は、やっぱり変えられなかった。