嘘つきな君
ギシギシと聞こえるプリングの音と連動する様に、世界が揺れる。
小さな自分の悲鳴と共に、彼の汗がポタリと顎先から一つ落ちた。
オレンジ色の明かりが灯る世界の中、野獣の様に互いの肌を求める私達。
ベットに食い込む様に押し付けられている、彼の大きな手が見える。
瞳を歪めながら、私を見下ろす彼が見える。
弓の様に反り返る体を押さえて、彼のキスを受け止める。
朦朧とする意識の中で、彼の手をぎゅっと握った。
「菜緒」
囁く様に私の名前を呼んで、絡まり合うように手を重ねる。
激しく揺れる世界の中で、離れない様に強く。
絶え間なく漏れる小さな声。
そんな私の顔を覗き込む、黒目がちな瞳。
その瞳を細めて、ゆっくりと体を屈めながら小さな音を立てて私のこめかみにキスを落とした。
そして、耳元にも小さくキスをして唇を開く。
「菜緒」
大切に紡がれる自分の名前を聞いて、胸がいっぱいになる。
ただ名前を呼ばれただけなのに、どうしようもなく嬉しくなる。
切なくなる。