嘘つきな君
第二章
嘘
木々が葉を落としてしまった。
ハラハラと散っていく、真っ赤に染まった紅葉。
色鮮やかだった世界が、寂しくなる。
吐く息の白さが目の前に広がる。
世界はどこか薄い銀色に包まれている。
「寒いですね」
「寒いな」
外での仕事から帰ってきて、コートを脱いだ常務にそう言うと、返ってきた声。
どこか不機嫌なその返答に思わずクスクス笑いながら、温かいコーヒーを淹れる。
「常務、寒いの苦手でしょう?」
「そうでもない」
「嘘。さっきから不機嫌そうに手を擦り合わせてるじゃないですか」
そう言って笑うと、図星だったのか、常務は不貞腐れた様に椅子にドカッと腰かけた。
本当に、意地っ張りなんだから。
「私は好きですよ。冬」
「どこが」
「なんだかロマンチックじゃないですか。何もかも」
キラキラと輝くイルミネーション。
どこか凛とした空気。
輝く星空に、降ってくる真っ白な雪。
全てがどこか、ロマンチック。