嘘つきな君
ずっと、彼が職場に来るのを待っていた。
鳴らない携帯を、ずっと握りしめていた。
大丈夫だと、何度も自分に言い聞かせた。
それでも、我慢の限界だった。
どうしてもじっとしていられなくて、気がついいたら彼のマンションまでの電車に飛び乗っていた。
会いたくて、堪らなかった。
会って、この不安な気持ちを晴らしたかった。
「体、壊してないかな」
冷たい手に息を吹きかけながら、ポツリと呟く。
今日彼に会えるかもしれないと思うだけで、心が甘い痛みを生む。
彼に会えば、きっとこの不安も消える。
悪い、って言って謝る彼を見たら、何もかも許してしまう。
早く会いたい。
会って抱きしめたい。
今にも雪が降りそうな寒空の中、じっと空を見上げて寒さに耐えるように身を丸くする。
すると。
コツ。
静寂の中に聞こえた、革靴の音。
弾かれる様に視線を向けると、そこに立っていたのは――。
「常務」
真っ黒のコートを着た、彼だった。
変わらない、その姿に安堵の溜息が漏れる。
やっと会えたと、嬉しくて堪らなくなる。
話したい事が沢山ある。
聞きたい事が沢山ある。
無意識に上がる頬を押さえる事なく、勢いよく掛けていたベンチから飛び降りた。
そして、上がる頬を抑える事なく駆け出した。
それでも――…。
「何してる」
聞こえたのは、身も凍るような冷たい声。
その声に、思わず前に出した足が動きを止める。
鳴らない携帯を、ずっと握りしめていた。
大丈夫だと、何度も自分に言い聞かせた。
それでも、我慢の限界だった。
どうしてもじっとしていられなくて、気がついいたら彼のマンションまでの電車に飛び乗っていた。
会いたくて、堪らなかった。
会って、この不安な気持ちを晴らしたかった。
「体、壊してないかな」
冷たい手に息を吹きかけながら、ポツリと呟く。
今日彼に会えるかもしれないと思うだけで、心が甘い痛みを生む。
彼に会えば、きっとこの不安も消える。
悪い、って言って謝る彼を見たら、何もかも許してしまう。
早く会いたい。
会って抱きしめたい。
今にも雪が降りそうな寒空の中、じっと空を見上げて寒さに耐えるように身を丸くする。
すると。
コツ。
静寂の中に聞こえた、革靴の音。
弾かれる様に視線を向けると、そこに立っていたのは――。
「常務」
真っ黒のコートを着た、彼だった。
変わらない、その姿に安堵の溜息が漏れる。
やっと会えたと、嬉しくて堪らなくなる。
話したい事が沢山ある。
聞きたい事が沢山ある。
無意識に上がる頬を押さえる事なく、勢いよく掛けていたベンチから飛び降りた。
そして、上がる頬を抑える事なく駆け出した。
それでも――…。
「何してる」
聞こえたのは、身も凍るような冷たい声。
その声に、思わず前に出した足が動きを止める。