嘘つきな君
予想もしていなかった言葉に、その声に、体が固まる。
嫌悪の眼差しを感じて、思考回路がショートする。
世界が動きを止める。
「何をしていると、聞いてる」
何も言わない私に告げられる、冷たい言葉。
聞き間違いかと思う程、冷たい言葉。
ドクドクと心臓が早鐘の様になる。
訳が分からず、ただ瞳を揺らす。
それでも、必死に喉の奥から声を発した。
「ずっと、連絡が取れなかったから……職場にも……」
ようやく絞り出した声は、今にも擦れてしまいそうな、か細いものだった。
そんな私の声を聞いて、微かに瞳を歪めた彼。
その瞳は初めて会った時の様に冷ややかで、温度の感じないものだった。
ドクドクと心臓が嫌な音を立てる。
瞳を揺らす私を見ても、彼はその表情を崩さない。
「心配で……」
「お前が心配する事じゃない」
一歩近づこうとした瞬間、強い言葉で動きを制される。
まるで迷惑だと言わんばかりの態度。
軽蔑する様な態度。
まるで、別人のような――。
その姿を見て、あの言葉が蘇る。
グルグルと回る、あの言葉。
呪いの様に、私の心の中を真っ黒に染めていく。
――彼はきっと、目を覚ますだろう。