嘘つきな君

爆発した心の叫びが、声になって落ちていく。

我慢していた気持ちが、強がって閉じ込めていた気持ちが、溢れて零れていく。


あの言葉も、あの声も、あの思い出も、あの笑顔も。

全部全部、嘘だったの?

ただの、暇潰しだったの?

舞い上がっていたのは私だけ?


でも、それでも良かったのに。

どうせ騙すなら、最後まで騙してほしかった。

覚めるから、『夢』というんでしょう?

だったら、覚めないでほしかった。

そうしたら、いつまでもそれが私の『現実』だったのに。


「どうして、最後まで騙してくれなかったのっ」

「菜緒っ」

「こんなにも好きにさせといて、もう1人でなんて生きていけないよっ」

「菜緒……」

「常務っ!!」


津波の様に襲ってくる感情が喉を焼く。

ようやく出た涙が、止まらない。


言葉にした事で、ようやく現だった世界が現実になる。

フィルターをかけていた世界が、クリアになる。

彼が隣にいない事が――現実になる。


「側にいてよ、常務っ!!」


行き場のなくなった気持ちが暴走する。

溢れる好きが、受け取ってもらえなくて落ちていく。


壊れていく。

思い出も未来も、心も、何もかも。


「全部、嘘でも構わないからぁっ」


まるで、夢みたいな人だったから。

あっけなく、いなくなってしまうのかな。

夢から覚めた瞬間、パッと消えてしまうのかな。


だけど、こんな終わり方なんて嫌だ。

思い出すべて、霞んでしまうような、こんな終わり方。


例え嘘でもいい。

それでもいいから、側にいさせてほしい。

私の気持ちだけ置いて、行かないでほしい。


初めて愛した人だから。

初めて、涙が出るほど愛した人だから。

そんな簡単に、私の世界からいなくならないで。
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