嘘つきな君

ポツンと1人、その場に立ち尽くす。

あっという間にいなくなった神谷さんの背中は、いつの間にか見えなくなっていた。

それでも、ハッと我に返った瞬間、再び怒りが湧き上がる。


な、な、なんなのアイツ!!

自由すぎるでしょ!!

少しは慰めるとかできないわけ!?

っていうか、聞くだけ聞いて結局何だったのよ!

なにが『またな』よ。

二度と会うかっつーの!!


「すいませんっ!! ブラックルシアン!!」


あんなイケメンは正直初めて見た。

でもっ!!

あんな自己中で、最低な男も初めて見た!!


今日は楽しくお酒を飲んで、嫌な事は全部忘れるはずだったのに。

アイツのせいで、イライラが増幅しちゃったじゃない!!


「なんなのよっ」


運ばれてきたお酒をグイッと飲み干す。

相変わらず酔えないなと悪態を吐きながら、隠れて地団太を踏んだ。

脳裏にこびりついた、あいつの顔を消すように――。

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