嘘つきな君
「やっぱり世界が違うわよね~。雲の上の人には、雲の上の人しか釣り合わないのよ」
ねぇ。
私はあと何回傷つけば、いいのかな。
あと何回涙を流せば、いいのかな。
あと、これ以上何を失えば、この心は癒えるのかな。
「――今度、お祝いしなきゃいけませんね」
あと、どれだけ心を壊せば、涙は枯れるのかな。
◇
鼻歌が世界に響く。
冷たい風が肌を撫でる寒空の中、明るい歌を歌う。
夏場は人で溢れていた屋上も、今では誰もいない。
枝だけになってしまった木々の間をすり抜けて、ベンチに腰掛ける。
それでも、冷気にさらされて冷たくなったそれに、思わず身震いした。
「お似合い……かぁ」
思わず零れた言葉に鼻歌が止まる。
その瞬間、一気に世界は寂しいものになる。
「ふふっ、確かに美男美女のお似合いだ」
見惚れてしまうほど男前な彼と、目も覚める様な美女。
ほら、お似合い。
今頃、飛行機の中かな。
楽しそうに旅先の話をするのかな。
一緒の部屋に泊まって、一緒に楽しそうに食事をして。
抱き合って、寝るのかな。
私に言ったような言葉を、彼女にも囁くのかな。
「ふっ……」
泣きたくなんかないのに、涙が零れる。
心の中がグチャグチャになる。
名前の分からない感情が、暴れ出す。
ねぇ。
私はあと何回傷つけば、いいのかな。
あと何回涙を流せば、いいのかな。
あと、これ以上何を失えば、この心は癒えるのかな。
「――今度、お祝いしなきゃいけませんね」
あと、どれだけ心を壊せば、涙は枯れるのかな。
◇
鼻歌が世界に響く。
冷たい風が肌を撫でる寒空の中、明るい歌を歌う。
夏場は人で溢れていた屋上も、今では誰もいない。
枝だけになってしまった木々の間をすり抜けて、ベンチに腰掛ける。
それでも、冷気にさらされて冷たくなったそれに、思わず身震いした。
「お似合い……かぁ」
思わず零れた言葉に鼻歌が止まる。
その瞬間、一気に世界は寂しいものになる。
「ふふっ、確かに美男美女のお似合いだ」
見惚れてしまうほど男前な彼と、目も覚める様な美女。
ほら、お似合い。
今頃、飛行機の中かな。
楽しそうに旅先の話をするのかな。
一緒の部屋に泊まって、一緒に楽しそうに食事をして。
抱き合って、寝るのかな。
私に言ったような言葉を、彼女にも囁くのかな。
「ふっ……」
泣きたくなんかないのに、涙が零れる。
心の中がグチャグチャになる。
名前の分からない感情が、暴れ出す。