嘘つきな君
一瞬フリーズしていた頭を、ようやく正常に戻す。
ポカンとしていた顔を緩めて、ニッコリと笑って片手を上げた先輩に駆け寄る。
「久しぶりだな、菜緒」
「どうしたんですか? こんな所で!」
「ん。ちょっと、近くで仕事があったんだ」
「そうなんですか?」
優しく微笑んだ先輩の言葉に合わせるように、ニッコリと笑う。
相変わらずだな、と思って。
近くで仕事があったなんて、きっとそんなの嘘だ。
本当は、どうしてここにいるか、なんとなく分かっている。
先輩はそういう人だから。
きっと、常務の婚約話をどこかから聞いて、心配して会いに来てくれたんだ。
「ちょうど帰り道にここを通ったから、菜緒いるかなって思っただけ」
「ふふっ。先輩って昔からタイミングいいですよね」
「え?」
「ちょうど私も飲みたかった所なんです。付き合って下さい」
ニッコリと笑った私に、先輩の眉がピクリと動く。
それでも、見えないフリをして駅まで向かった
◇
「乾杯ーっ」
頼んだビールを勢いよくぶつけて、喉に流し込む。
きっと、気を使ってだろうか。
個室になったこの部屋は、先輩の優しさだと思う。
「あーっ、美味しい」
「そら、良かった」
ふぅーっと大きく息を吐いた私を見て、クスクスと先輩は笑う。
相変わらず、面倒見がいい。
私にとっては、何でも言えるお兄ちゃんの様な存在だ。
ポカンとしていた顔を緩めて、ニッコリと笑って片手を上げた先輩に駆け寄る。
「久しぶりだな、菜緒」
「どうしたんですか? こんな所で!」
「ん。ちょっと、近くで仕事があったんだ」
「そうなんですか?」
優しく微笑んだ先輩の言葉に合わせるように、ニッコリと笑う。
相変わらずだな、と思って。
近くで仕事があったなんて、きっとそんなの嘘だ。
本当は、どうしてここにいるか、なんとなく分かっている。
先輩はそういう人だから。
きっと、常務の婚約話をどこかから聞いて、心配して会いに来てくれたんだ。
「ちょうど帰り道にここを通ったから、菜緒いるかなって思っただけ」
「ふふっ。先輩って昔からタイミングいいですよね」
「え?」
「ちょうど私も飲みたかった所なんです。付き合って下さい」
ニッコリと笑った私に、先輩の眉がピクリと動く。
それでも、見えないフリをして駅まで向かった
◇
「乾杯ーっ」
頼んだビールを勢いよくぶつけて、喉に流し込む。
きっと、気を使ってだろうか。
個室になったこの部屋は、先輩の優しさだと思う。
「あーっ、美味しい」
「そら、良かった」
ふぅーっと大きく息を吐いた私を見て、クスクスと先輩は笑う。
相変わらず、面倒見がいい。
私にとっては、何でも言えるお兄ちゃんの様な存在だ。