嘘つきな君
リビングの定位置に座って、焼き上がったトーストとミルクを口に運ぶ。
窓の外に目を向ければ、高層ビルが立ち並び、朝日を受けて輝いている。
その景色を見て、無意識のうちに溜息を漏らす。
「今日も、職安行かなきゃ……」
憂鬱な気分になりながら、ポツリと呟く。
きっと、あんな立派なビルの中で働いている人達は、私みたいな事に陥ったりしないんだろうな。
綺麗なオフィスで働いて。
休む間もなく仕事がきて。
社会から必要とされて――。
「はぁ……」
思わず出る大きな溜息。
半分食べたトーストも、もう喉を通らなくて皿の上に置いた。
そんな時――。
TRRRR。
静かな部屋に鳴り響く、携帯の音。
こんな朝早くから珍しい。
手についたパンくずを払ってから、ソファーの上に投げ捨ててあった携帯を拾い上げ、発信者を見る。
「美鈴?」
発信者は同期の美鈴。
会社が倒産した事を知らせてくれた張本人だ。