嘘つきな君
「落ち着いたら、遊びに来てくださいね、先輩」
『あぁ、仁美と一緒に遊びに行く。その時は、何か日本食持って行ってやるよ』
「あ、じゃぁ、駄菓子希望です」
『子供か』
互いの笑い声が耳元で響く。
それでも、ふとした沈黙の後、先輩の静かな声が耳に届いた。
『昨日、会ったよ』
誰に。
なんて聞かなくても分かる。
その人しか、いないから。
「そう……ですか」
『あぁ』
「元気でした?」
『あぁ。相変わらず』
その言葉に、ふっと笑みが零れる。
彼の事を聞いても、今は悲しみに打ちひしがれる事はない。
もう、心は穏やかだ。
「次会ったら伝えてください」
『――』
「仕事も、ほどほどにって」
いつも1人でなんでも抱え込む人だから。
それでも、もう1人じゃないんだから。
少しぐらい、誰かに荷物を預けてもいいんじゃないかな。
『……伝えておくよ』
うんと頷いて、また他愛もない会話をする。
それでも、仕事の時間だからと言って先輩は電話を切った。
頑張ってこい。と一言添えて。