嘘つきな君

メイン画面に戻った携帯を見つめて、再び小さく息を吐く。

先輩にも、しばらく会えないと思うと寂しい。

だけど、いつでもこうやって電話も出来るし、二度と会えない訳じゃない。

僅かに滲んだ悲しみを振り払うように、天井に向かって大きく背伸びをする。

そして、勢いよく息を吐いて、立ち上がった。


「そろそろ、行きますか」


時計を見れば、もうすぐ手続きに行かなきゃいけない時間だ。

楽しくって、つい長電話してしまった。


決意を決めて、大きく息を吐いてから、重たい腰を上げる。

そんな時再び見えた、あの待合室のソファー。

思わず立ち止まってしまったけど、ゆっくりと口角を持ち上げて呟く。


「いってきます」


ここが私のスタート。

新しい自分を見つけにいく。

もう、弱い自分とは、さよなら。


カツカツとヒールを鳴らして出発ゲートに向かう。

ただ真っ直ぐに前だけを向いて。

一度も、振り返らずに。


徐々に人が増えだした出発ロビー。

眩しい朝日が、ガラス張りの天井から降り注ぐ。

そんな中、大きな伝言掲示板を見上げてゲートを確認する。

次、地上に足が着く時はアメリカだ。

知らない土地。

それでも、怖くなんてない。

自分が選んだ道だから――。
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