嘘つきな君
その後、徐々にゾロゾロと社員達が集まってきた。

みんな揃って、閑散とした事務所を見て目を見開いていた。


「私達、どうなるんだろ」


誰かが呟いた一言。

みんな不安で不安で仕方ないといった顔をしている。


当たり前だよね。

突然職を奪われて、確かな情報すら入ってこない宙吊り状態な私達。

前に進まなきゃって分かっているけど、どこか足踏みしている。

それは、出来る事なら、ここに戻りたいと思っているからなのかもしれないけど――。


誰一人、口を開かない静かな一室。

言い表し様のない不安が、社員達の心に降り積もっていく。

窒息してしまいそうな沈黙が、ただただ過ぎていく。

そんな時――。


「みんな、集まっているか」


突然勢いよく扉が開いて、みんなの視線が扉の方に向けられる。

そこに現れたのは部長だった。

以前と変わらない姿だけど、顔には明らかに疲れが滲んでいる。

それでも、そんな事構わずに社員達はバタバタと部長の元に駆け寄った。


「部長っ!」

「部長、どういう事か説明してくださいっ」

「インサイダーって……私達どうなるんですかっ!?」


ようやく現れた上司を見て、みんな堰を切ったように口々に不満をぶつける。

静かだった事務所が、爆発した様に騒がしくなった。
< 38 / 379 >

この作品をシェア

pagetop