嘘つきな君

嬉しさのあまり、その場で子供の様に飛び跳ねて喜ぶ社員達。

私も同じように、歓喜の声を上げて飛び跳ねた。


一時はどうなるかと思ったけど、やっぱり神様は頑張る私達の味方だったんだ。

これで、もう不安な日々とはおさらばなんだ!


「本当に良かったね、菜緒っ。また、一緒に働けるね!」

「もう、本当に神様だよっ! 神谷ホールディングス!!」

「でも、なんでそんな超一流企業が私達なんかの会社を買収したんだろ」

「きっと私達の運営してるサイトだったりアプリが、将来性があるとか見込んでくれたんだよ~!! ほら!! 一時期うちの会社のゲームが大ヒットだったじゃない!!」

「そっか……そうだよねっ!!」


美鈴と手を取り合って、その場で抱き合う。

それでも、頭の端でふと何かにぶち当たって我に返った。


神谷、ホールディングス……?

神谷……神谷……。


そういえば、あの男も神谷だったな。

まぁ、でも、そんな珍しい名前でもないか。


浮かんだ疑問を勝手に自己解決して頷く。

そんなわけないと、決め込んで。

それでも。


「静かにっ。今日その神谷ホールディングスの常務がいらっしゃってる」


騒がしい事務所に響く部長の声。

その声を聞いて、湧き上がる社員達の声が一気に聞こえなくなった。
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