嘘つきな君
◇◇◇
「ねぇ、見た!? 神谷ホールディングスの常務!!」
「見た見た!! イケメンすぎ!! 私直視できなかった!!」
「私達を救ってくれたヒーローよ!! それだけで輝いてるってのにっ」
「神谷ホールディングス社長のご子息なんだって!!」
「って事は、次期社長!? ちょっと、玉の輿じゃない!!」
「29歳だって、若―いっ!!」
「いい大学も出てるって噂!! 頭ヨシ、顔ヨシ、将来ヨシ、性格ヨシって、最高じゃん!!」
「って、あんた性格知らないでしょ!」
「あんな素敵な笑顔で笑う人が、性格悪いわけないじゃない!」
―――悪いよ。
隣の席で盛り上がる女性社員達に、心の中で小さく毒づく。
もはや、会社の中はあの神谷常務の事で、もちきり。
言葉通り、神谷フィーバーだ。
突然現れたヒーロー兼イケメン重役に、女性社員はもうテンション上がりっぱなし。
どこから仕入れた情報か知らないけど、身長やら趣味やら学歴やらなんやら、いろんな情報が飛び交っている。
「ねぇ、菜緒はどう思う? 神谷常務っ」
「あ……うん。いい……んじゃない?」
「だよね!!」
興奮気味の社員達が頬をピンクに染めて騒いでいる。
そんな中、私だけが冷めきった表情で苦笑いを浮かべた。