嘘つきな君
落ちる所まで落ちた私達の会社を拾ってくれた、神谷ホールディングス。
正直、神谷ホールディングスにメリットがあったのかは謎。
でも、そこら辺を考えるのは上層部の仕事だから、私は今まで取り働く事だけに専念する。
一流企業の傘下に入った事で、我が社の暗いイメージは一掃された。
今までの取引先とも、なんとか手を切る事なく進められている。
噂によると、あの男が私達の会社を傘下に入れたいと社長に申し出たとか……。
まぁ、噂だから本当の事は分からないけど、もし本当にそうなら、あの神谷大輔にも感謝しなければ。
実質、神谷ホールディングスが経営を握る事になった、私達の会社『シャルル』。
仕事内容や、社員は全くそのまま。
変わった事といえば、事務所の場所が物凄く良くなった事と、トップがあの男になったって事ぐらい。
もしかしたら、職場でバッタリ会ったりするかも!? と思ってヒヤヒヤしていたけど、直ぐに我に返った。
神谷ホールディングスは世界を股にかける超一流企業。
彼は、その常務。
いわば、次期社長だ。
あの性格の悪すぎる男が、将来この日本を背負っていくと思うと認めたくないけど。
腐っても社長。
御曹司だ。
買収して経営を担うといっても、こんな小さな会社に顔を出すわけない。
おまけに、こんな大きなビルの中で、数えきれない程の社員がいる中でバッタリ会う訳ない。
そう思っていたのに――。